鶴林 豊成

鶴林豊成さん近影

ハナシノブにツクシマツモト、原野にそっと息づく山野草を守り育て、後世に伝える

プロフィール

鶴林 豊成(つるばやし とよなり)さん/昭和17年、阿蘇郡高森町生まれ。中学卒業後、家業を継いで陸稲と菜種などを生産する農業に従事。その後、高冷地野菜のキャベツとあか牛の繁殖を始める。時間があれば、家庭菜園で作った野菜を使って料理することと、孫と遊ぶ時間が楽しみ。

どのような場所なのでしょうか

保護区の手入れの画像平成8年10月に、私が所有する原野の1町2反が「希少野生動植物種ハナシノブ生育地保護区」に指定されました。。ハナシノブは全国的にも希少植物で、現在は高森町でしか見られなくなったそうです。専門の先生によると保護区内にはハナシノブ、ツクシマツモト、フクジュソウ、サクラソウなど、春先から秋まで次々と花が咲きます。1年間に200種もの山野草がみられるそうです。
調査に来られた京都の先生が、また新しい花を見つけられたんですよ。全国でも珍しいというハナカズラで「全国にない植物がここにはある」と言って感激されていました。

“よそにはない花がある”

採草地の画像もともと原野では、かやぶき屋根のカヤを取ったり、牛を養うために草を切ったりしていました。しかし、屋根は瓦になり、牛は減って干し草もいらなくなり、段々と原野はいらないものになっていきました。放っておいても育つ杉を植え、人工林に代わっていく山も増えています。原野を守るためには労力も経費もかかり、並大抵のことではありません。しかし、環境省からの指定を受けて、大変でも守っていかなくてはならないと認識が変わりました。
草刈り以外は何も手を入れてはいけなくなりましたが、その通りにしていたら、指定を受けた直後にハナシノブが少なくなってしまいました。ある程度は人の手を入れないと保護できないことが分かり、手入れをするうちに段々と本数が増えてきました。
先生方が来られて「よそにはない花がある」と言われるとうれしいですし、大事にしないと、という思いがますます強くなります。

今後の活動・課題

咲き乱れる山野草の画像花が好きな人は、結構奥まったところでも入ってきます。しかし、盗掘しても山野草は植え替えると育ちません。保護区に指定されてからは立札を立てていますし、春先からは1日おきに1~2時間ほど草取りをします。また、保護区の隣は畑なので、ほぼ毎日行きますから、今のところ盗掘はありません。
ハナシノブ生育地保護区に指定され、自慢できる財産ができました。息子や孫にもその価値を伝え、一緒に保護していきたいですね。

  • このページの原稿と写真は公益財団法人グリーンストック発行「草原だより Vol.46」より抜粋いたしました。
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