三森 伸治

三森 伸治さん近影

観光農園を通じて環境保全型農業の必要性を伝えていきたい

プロフィール

三森 伸治(みもり しんじ)さん/昭和47年、高森町生まれの高森町育ち。
阿蘇高校を卒業後、愛知県に就職。23歳でUターンしてすぐ、父親のもとで就農する。32歳で、実家が農家だった友子さんと結婚し、現在、小学3年生を筆頭に4人の男の子の父親。友子さんと2人で農業に従事しながら、地元小学校での食育活動にも熱心に取り組んでいる。

きっかけ

農家の生まれですが継ぐつもりはなく、大学に行きたくなくて、高校卒業後に愛知県で就職しました。4年ほどして、それまで連絡がなかった両親から急遽「帰ってこい」と言われて戻ってきました。頃合いを見て、また県外に出ようと思っていたんです(笑)。ですから、農業に対する姿勢も中途半端。頑張ろうという気持ち、仕事を覚える気がないから面白くない。ところが、イヤイヤながらでも仕事を覚え出すと理屈が分かり、楽しくなってきました。

「ここで作ってください」

収穫の様子を写した画像ナスの「ひごむらさき」を9年前から栽培を始めました。父から畑を借り、試しに栽培してみて、ナスは嘘をつかないと感じました。適期に追肥をして、丁寧に手入れをしてあげると、その分きっちりと収穫量を増やしてくれるのです。
それに、「ひごむらさき」は阿蘇が栽培の適地。競合地がないことも魅力でした。赤ナスの改良系であり、色を出すのが難しい品種ですが、標高800mラインで育てると、夏場でも真っ黒になるんです。中山間地である高森でしか出せない色があると知り、ナスが「ここで作ってください」と言っているように感じました。

継続することが大切

収穫体験の画像青壮年部の高森支部長になっていたこともあり、小学校での食育に取り組み始めました。小学1年生はひまわりの種まき、2年生はカライモ植え。3年生では大豆を植えて育て、収穫して豆腐や納豆にして食べるまでを体験します。教える立場である以上、私たちも料理ができなくてはと、男の料理教室も始めました。4年生はしいたけ栽培、5年生では耕作放棄地でもち米を育て、餅つき大会をして施設などに配っています。食育の成果はすぐには現れないでしょう。10年、20年先のことを考え、継続することが大切だと思っています。大人になって子どもが生まれた時、改めて考えてもらえればいいですね。

今後の夢

「ひごむらさき」を全国の人に知ってもらいたい。甘くて、アクがないので調理の手間がかからず、生食ができます。そして調理によってとても食感が変わります。油を使うとトロットした食感になり、生食ではふわふわっとして美味しい。でも、県外への出荷数が少ないこともあり、認知度はまだ低いんです。今は17軒の農家が栽培していて、部会で販促イベントに出店したり、レシピを渡したり…。地道な活動をしているところです。それに、栽培方法についても技術が確立していないため、改善の余地がありますし、やりがいを感じています。

高森は何もない小さな町ですが、住めば都。
基盤整備をしていないため土地は狭いのですが、気候が良く、農業をするにはとてもいい所です。それに、「ひごむらさき=高森」という認知度が全国的に高まれば、調べて訪ねてくる人もいるかもしれません。また、子供たちは食育、農業体験などを通して、高森を好きになってもらいたいと思います。人が残れば、新しい動きが生まれてくるでしょう。今後は、もっと先の高森を考えていきたいと思っています。

  • このページの原稿と写真は公益財団法人阿蘇グリーンストック発行「草原だより Vol.53」より抜粋いたしました。
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