高橋 孝徳

高橋孝徳さん近影

一緒に米作りをした子どもたちと将来、酒を酌み交わしたい

プロフィール

高橋 孝徳(たかはし たかのり)さん/昭和25年、産山村生まれ。
練習農場に2年間通った後、さまざまな農家で研修して農業を学ぶ。20~26歳にかけて全国を放浪し、地元に帰って農家を継ぐ。平成6年に鯉農法による米の無農薬栽培を開始。平成10年に同農法によって作られた「五百万国」と池山水源の水で仕込んだ日本酒と焼酎「産山村」を造る。

きっかけ

私は農家に生まれ。20代前半に、日本全国を旅しました。そこで都会で川の汚染や、農薬の被害を目の当たりにしました。農薬を使わないと除草は大変な作業になります。鯉農法は鯉を田んぼに放し、尾びれで水を攪拌させることによって除草効果に繋げる方法です。
長野県の農家では、鯉農法を行った後にはタンパク源確保の目的もあって鯉を食べるとも聞き、見学に行って参考にしました。実際にやってみると稲の生育にも良い影響を与えるようで、苗が横に広がって丈夫になります。

「これがやりたいんだ」

生産された酒類の画像「産山村」は日本酒、焼酎ともに、鯉農法で作る無農薬米の「五百万国」と名水百選に選ばれた池山水源の水で仕込んでいるのが特徴。「酒米研究会」を結成している農家4人の約2ヘクタールの田んぼから収穫した米で、日本酒が一升瓶で約1,600本できるでしょうか。焼酎も酒の酵母を使い、掛け米、麹米ともに「五百万国」を使っています。焼酎は当時はくず米と呼ばれる物や、破砕米(加工用としてあえて破砕した米)で造る場合が多いのですが、私たちは日本酒と全く同じ米で造っているので香りが強く、とても贅沢な味わい。蔵元からも「そんなもったいないことはしなくていいんじゃないか」と言われましたが、我々は「これがやりたいんだ」と押し通しました。
ラベルに添加物を書くのが嫌で、混じりけのない酒を造りたいという想いもあります。酒をほかの酒蔵に売り買いする「桶売り・桶買い」などについても知っていたので、原料から酒造りまで自分たちの目が届く範囲でやることに重きを置きました。

子どもたちとの交流

水田の鯉を捕獲する子どもたちの画像鯉を田んぼに放したり、捕まえたりする作業は地元の子どもたちに手伝ってもらっています。最初は「稲を踏んだらだめだよ」などと注意をするのですが、始まるとみんな泥んこになって一生懸命やるので、なかなか指導が大変です(笑)。焼酎のラベルの題字は中学生や高校生にお願いしました。彼らが20歳になって一緒に酒を飲むのが楽しみです。米作りを経験した子どもたちが、大きくなって酒造りの仲間になっていってくれたら嬉しいですね。
今年は阿蘇の涅槃像の写真をラベルにした焼酎を発売します。
阿蘇は地元で作られたお土産が少ない。これまでは「産山村」を前面に出していましたが。阿蘇をもっと知ってもらいたいという思いで造りました。この酒が少しでも阿蘇を知ってもらうきっかけになればと思います。

  • このページの原稿と写真は公益財団法人阿蘇グリーンストック発行「草原だより Vol.51」より抜粋いたしました。
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