「おいしい和牛」を追い求めて、日々探求
基本データ
・所在地:阿蘇市三久保692
・従業員:4名(塚本武弘さん、陽子さん、父、母)
・飼養形態:繁殖肥育一貫経営
・飼養頭数:112頭
・飼養品種:褐毛和種
普段私たちが口にする牛肉の多くは、牛枝肉取引規格に基づき日本食肉格付協会によってA5やA4といった等級に格付けがされ、一般的にサシの多い枝肉ほど高値で取引されている。
しかし ASO塚本ファームではそういった規格にとらわれない「おいしい和牛」を追い求めて日々研究を行っている。
それは、牛にやさしい飼い方にある。
牛は本来草を食べて育つ草食動物である。和牛を肥育する際、一般的には濃厚飼料を多く与えることで増体させていくが、ASO 塚本ファームでは粗飼料の給与に重点を置いている。
堆肥づくり、土づくりから徹底し、牛にとって必要な栄養素やミネラルを十分に含んだ良質な粗飼料を自社生産している。その粗飼料を飽食で給与し、そこに自ら配合設計した濃厚飼料をバランスよく与えることにより、ルーメン(第一胃)の持つ消化能力を向上させ、飼料効率を最適化する。
そうすることで、牛に負担をかけることなく肉質(おいしさ)を高めることができる。特にあか牛は、他の和牛に比べて粗飼料の利用効率が優れていることが分かっているため、非常に効率的な飼養管理だと言える。
濃厚飼料は飼養する全ステージにおいて制限給与を行っている。決められた時間帯と量でエサを与え、さらに、牛一頭一頭に合わせたエサの微調整をすることで、エサの無駄を生じさせず、無駄な脂肪を付けさせない工夫を行っている。
また、ASO塚本ファームでは和牛肥育でありがちな過度なビタミンコントロールも行っていない。むしろ牛が体調を崩さないように積極的にビタミンA、カロテン(飼料由来)を給与している。
また、寒暖差が激しい時期などに与える乳酸菌などの生菌剤を除いて、添加剤を一切使用していない。
牛のフレーム(骨格)づくりも重要視しており、肥育期間が 29か月と通常より長く枝肉重量が大きいのも特徴だ。
実際に取材で牧場へ伺ったとき、驚いたことが2つあった。
まず1つ目は、牧場特有の臭いがしないこと。これも牛のルーメンの状態が良く、内臓に負担をかけていないため、臭いがしないのだという。さらに牛舎にいるハエが非常に少ない。糞に残っている未消化の栄養分が少ないためハエが増えにくい上に、夏場はハエの駆除を徹底している。発生源をなくすことはもとより、ハエを発見するとハエたたきで徹底的に駆除する。
2つ目は、どの牛も大人しいこと。牛たちの性格は肉質(おいしさ)とも相関関係にあると考えており、やさしい牛たちに育つよう全頭に名前を付け「〇〇ちゃん~おいで~」といった声かけやブラッシングを日々行っている。
栄養管理の面でも、飼養管理の面でも牛にやさしく。
それがASO塚本ファームが追い求める「おいしい和牛」を生産する秘訣だ。
このように愛情いっぱいに育てられた牛を、「おいしい和牛」の味を理解し、楽しんでいただける牛肉が大好きな人たちに食べていただきたいという想いで、今年から肉屋を始められた。
そんな想いの詰まったおいしいあか牛は SNSを通じて、営業日のお知らせ配信があり、販売されている。
取材日:令和6年12月6日